(登場人物)
マルケ:研究チームのリーダー。ぼくが研究所になじめるように気を遣ってくれる。
男の子:謎の存在。5歳くらい。
アレクサンダー:ルームメイトのポーランド人。明日、フィンランドを発つ。
ユーリオ:ルームメイトのメキシコ人。ぼくと同じで来年の夏までフィンランドにいる。
8時半-----
起きる。
朝ごはんはパンとバナナ。
2週間に1回のシーツ交換の日。
掃除の人に新しいシーツをもらう。
9時半-----
研究室へ。
マルケが来ていないので、一人でのんびりと研究の作業を始める。
自分の研究に関係がありそうな論文を見つけた。
マルケ来る。
明日はなにやら小さいパーティーをやるようなので、マルケと一緒にその時に食べるピザを選んだ。
何故か分からないけれど、小さな男の子がうろうろしている。
どうやら、誰かの子どもみたい。
11時半-----
クリストファーと食堂へ。
魚のフライ。
引越しの話などをしながら食べる。
12時半-----
食後は仕事がはかどらないので、メールの整理などから始める。
マルケたちに呼び出され、再来週にプレゼンをするメンバーに入れられてしまった。
準備しなくちゃ。
14時半-----
ティーブレイク。
お茶を飲みに休憩スペースに行くと、朝見かけた男の子がテーブルの下を探検していた。
隙間からちらちらとこちらを見てくるので、視線でタッチしてやった。
目でやる鬼ごっこだ。
ちらっ。
お母さんの影からこっちを見てくる。
ぎょろり。
見つけてやる。
うきゃ。
お母さんの陰に隠れる。
今度はテーブルの下の足の隙間から、こそり。
ぎろり。
見つけたぞ。
うひっ!
それを繰り返す。
ぼく(たち)はとても楽しい時間を過ごした。
15時-----
研究の論理部分に関する考えを整理した。
ちょっと疲れたので、コップを洗いに流し台に行ったら、またいた。さっきの男の子。
ぼくが階段を下りようとすると、目の前を走って逃げる。
ぼくは物陰に隠れて、半分の顔で男の子を見つめた。
逃げる男の子。
そんなこんなで、また鬼ごっこが始まった。
でも、ぼくは走らない。
日本からやって来た研究者がいきなり研究所で走り回っていたら、何だか誤解を与えかねないからだ。
ぼくは曇りガラスで囲まれた部屋の中に入った。
男の子は恐る恐るその部屋に近づいてくる。
男の子からは何となく、部屋の中に影が動いているのが見えるはずだ。
近づくと、突然影が近づいてきて、曇りガラスをガチャガチャと叩く。
それがぼくだ。
男の子は逃げる。
でも、またしばらくするとやって来る。
あれ?
男の子はさっきの影が見つけられない。
曇りガラスに顔を近づけて見てみる。
すると、物陰から突然、何者かが近づいて来て、曇りガラスを叩く。
ぼくだ。
ぼくはコートかけの裏に隠れていたのだ。
男の子は走って逃げる。
曇りガラスだけれど、男の子の顔が笑っているのがはっきり分かる。
そして、少しするとまた次のパターンが始まる。
そんなことを何回も繰り返していると、ついにお母さんがやってきた。
ぼくたちの遊びはおしまいだ。
言葉を交わさなくても遊べるんだ。
ぼくはとても満足した。
最後に、モイモイ(バイバイの意)と言ったら、かわいい声でモイモイと返してくれた。
ぼくたちはもう、友だちだ。
16時半-----
きりのいいところで研究を切り上げて、帰宅。
18時-----
日本と電話。
21時------
ルームメイトのアレクサンダーが明日でポーランドに帰ってしまうので、みんなで一緒に写真を撮った。
この三人の友情も不思議ながら確かにある。
派手ではない。
何かを一緒に成し遂げたわけではない。
語り明かしたわけでもない。
それでも、緩やかにつながる絆。
今度、ユーリオと二人でポーランドに遊びに行こう。
22時-----
晩御飯。
ポトフ、コーンサラダ、サラミ。
0時-----
シャワーを浴びる。
1時-----
寝た。